ことわざの中には似たような意味を持つものがたくさんあります。
用心の大切さを説くことわざ「転ばぬ先の杖」と「備えあれば憂いなし」もよく似たことわざとして非常に有名です。
全く同じ意味として使われることも多いこの2つのことわざですが厳密には指している内容が全く異なる別物です。
今回は、「転ばぬ先の杖」と「備えあれば憂いなし」の違いについて解説します。
「転ばぬ先の杖」とは?
「転ばぬ先の杖」とは「何かあった時のためにあらかじめ手を打っておくこと」という意味のことわざです。
転んでしまうより先に杖をついておけば転倒防止になることになぞらえてトラブルに先んじて行動することの大切さを説いています。
「転ばぬ先の杖」では何かが起きる前にあらかじめ手を打っておくことが重要視されています。
後手に回らず先手をとって行動することの大切さが強調されており、現代風に言えばリスク低下につながる行動の重要性を訴えています。
「転ばぬ先の杖」には「転んでから杖をついても手遅れである」という意味が込められています。
後悔してから行動しても遅いので出来ることは早めにやっておいたほうがよい、という動的なニュアンスが強めです。
「転ばぬ先の杖」の使い方
・転ばぬ先の杖として旅行保険に加入しておこう。
・ずいぶん荷物が多くなってしまったが転ばぬ先の杖だと思えば仕方がない。
・事前調査の費用が膨らんだが転ばぬ先の杖なのだから必要なコストである。
・家具の固定や救命講習の受講など転ばぬ先の杖で防災対策に励む。
「備えあれば憂いなし」とは?
「備えあれば憂いなし」とは「普段から準備を怠らなければ何か事が起きても心配がない」という意味のことわざです。
「備えあれば憂いなし」は中国の故事に由来する故事成語です。
出店である「書経」の「説命中」には「有備無患(ゆうびむかん)」と記述されており現在でもこのまま故事成語として使われている言葉です。
もともとは王としての心がけを説いていますが現在では幅広く様々な場面で使われています。
「備えあれば憂いなし」では備えつまり準備や用意が重視されています。
いざというときに慌てずすみやかに対応できるよう準備しておくことの大切さが説かれていますが積極的な行動は重視されていません。
事が起きるのに備えてはいますが何もなければそのまま、というのが大きな特徴です。
準備は万全に備えておくが対応や行動は事が起きてから、という静的で受け身なニュアンスがこめられています。
「備えあれば憂いなし」の使い方
・備えあれば憂いなしとばかりに災害対策用の備蓄食料を買い込む。
・プロテクターを装着するのは備えあれば憂いなしの考えに基づくものだ。
・備えあれば憂いなしとばかりに折りたたみ傘を持ち歩く。
・置き薬が人気なのは備えあれば憂いなしと考える人が多いからだろう。
「転ばぬ先の杖」と「備えあれば憂いなし」の違い
「転ばぬ先の杖」は有事に備えて先手を打って行動するのに対し「備えあれば憂いなし」は有事の際に素早く行動できるよう準備をしておく後手の考え方です。
積極的な対策が実を結ぶ場合は「転ばぬ先の杖」ですが先手の行動似し相がある場合は備えを重視する「備えあれば憂いなし」になります。
安全保障に例えると侵略に備えて積極的に哨戒行動や偵察活動を行うのが「転ばぬ先の杖」、軍備増強や物資の調達など平坦を整えておくのが「備えあれば憂いなし」です。
まとめ
「転ばぬ先の杖」と「備えあれば憂いなし」はどちらも用心の大切さを説くことわざですが意味するものは異なります。
具体的な行動内容に合わせてふさわしいことわざを使いましょう。