この記事では、「自粛」と「遠慮」の違いを分かりやすく説明していきます。
「自粛」とは?
「自粛」【じしゅく】とは、強制されなくても自らの意志で言動をつつしむことです。
「自粛」に使われている漢字の意味を見てみると「自」はおのれ、みずから、「粛」はつつしむ、厳しくするなどの意味を持っています。
これらの漢字を組み合わせた「自粛」は、自ら物事をつつしむことを表しています。
さらに「粛」は厳しくする、正すことも指しており、「自粛」は秩序を保つため自身を犠牲にして言動をつつしむ意味の言葉になっています。
これは、言動をつつしむかどうかが最終的に自己判断にゆだねられている状況です。
ただし、その背景には「その人が言動をつつしまなければ、何らかの秩序が乱れるおそれがある」という事情があります。
そのため「人の道理としては、言動をつつしむのが正しい」という空気が濃くなっており、他人からの評価が下がるのをおそれ、自分の意志で言動をつつしむことを選択しているのです。
類語には、ふるまいに気を付けるという意味の「自重」【じちょう】や、自身の欲望を抑えるという意味の「自制」【じせい】があります。
「自粛」の例文
・『ウイルス感染の拡大を防ぐため、会食の自粛を呼びかける』
・『不倫が発覚し芸能活動を自粛する』
「遠慮」とは?
「遠慮」【えんりょ】とは、他人に気を遣って言動を差し控えることです。
遠回しな断り文句にも使われています。
「遠慮」の語源は「深謀遠慮」【しんぼうえんりょ】という言葉にあります。
これは「遠い将来を案じ、深く配慮する」という意味を持ちます。
「遠慮」の部分が独立し、配慮して行動するという意味を持って使われるようになりました。
漢字の「慮」には相手の気持ちを考えるという意味があるように、「遠慮」は他人や周りの状況に気を配ったうえで、良かれと思って言動を差し控えるさまを表しています。
断ること、辞退することを「遠慮する」と言うのも、直接「断わる」と言わず婉曲した表現を使うことで、相手を傷つけない気遣いをするためです。
類語には「慎む」「控える」「節制」【せっせい】などがあります。
「遠慮」の例文
・『空席が1つだけ残っていたが、座るのを遠慮してほかの人に譲った』
・『訪問先で家に上がるよう勧められたが、遠慮させていただいた』
「自粛」と「遠慮」の違い
「自粛」と「遠慮」の違いを、分かりやすく解説します。
「自粛」は自分の意志で言動をつつしむことです。
「遠慮」は人に気を遣って言動を差し控えることです。
どちらも、他人に迷惑をかけないようにするため自身の言動を控えるふるまいですが、置かれている状況が少し異なります。
「遠慮」は、相手に対する思いやりから自分の意志で言動を控えることです。
しかし「自粛」は言動を控えなければ他から非難される可能性があり、自己判断ではあるものの、やむを得ず言動を控えている一面もあります。
まとめ
「自粛」と「遠慮」は違いがあいまいで同じような使われ方をされることもありますが、それぞれの意味は異なります。
モラルや思いやりを重視する日本で、日常的に使われている言葉です。
ぜひ意味を正しく把握し、適切に使い分けていきましょう。