高校や大学で理系の学問をやってこなかった人にとっては、化学とか物理学というのはよく分からない分野に見えます。
感覚的には「物理学」は世の中にある物体の動きや法則を研究し、「化学」はもっと小さな分子や原子の世界を研究するという理解することが多いのですが、その中間の学問もあるというのはあまり知られていません。
「化学物理学」や「物理化学」と呼ばれているそれらの学問はどういうものなのでしょうか。
この記事では、「化学物理学」と「物理化学」の違いを分かりやすく説明していきます。
「化学物理学」とは?
「化学物理学」とは、英語では「chemical physics」と言い、「化学の分野の内容を利用して物理学の方法論を解き明かしてゆく」学問です。
つまり、やっていること自体は物理学のアプローチであり、結果として得られるのも物理学的な理論ということになります。
例えば、医療機器として有名な核磁気共鳴(NMR)の使った実験などを行います。
「物理化学」とは?
「物理化学」とは、英語では「physical chemistry」と言い、「物理学の理論を利用して、分子などの化学的な仕組みを解明する」学問です。
つまり、化学の世界がなぜそうなっているかを解き明かすことが目的です。
例えば、水の分子が水素と酸素の原子が作る二等辺三角形になっているのは何故かを解明するということもこの分野のテーマの一つです。
「化学物理学」と「物理化学」の違い
「化学物理学」と「物理化学」の違いを、分かりやすく解説します。
この2つは共に「物理学」と「化学」の中間の領域を扱う学問であるという部分では同じです。
最も大きな違いはその学者が本来どちらなのかということです。
つまり「化学物理学」は「物理学者」の学問であり、「物理化学」は「科学者」の学問です。
この違いはアプローチにも現れていて、「化学物理学」は、「化学の知識や法則を物理学の原理に生かす」に対して、「物理化学」は、「物理法則を利用して化学の本質を研究する」という形になります。
ただ、この2つの違いは実際には曖昧であることも多く、同じ研究をしている人たちが違う学問を名乗っているということもあります。
「化学物理学」の例文
「化学物理学」の例文は以下のようになります。
・『化学物理学では化学反応の量子力学的解釈を行います』
・『化学反応の実質的な状態を観察して理論化するのは化学物理学の分野です』
「物理化学」の例文
「物理化学」の例文は以下のようになります。
・『物理化学とは熱力学と量子力学の法則を利用します』
・『物理化学は有機物理化学と無機物理化学に分けられます』
まとめ
この記事では、「化学物理学」と「物理化学」の違いを、解説してきました。
外から見れば「化学」も「物理」も理系の難しい学問に見えます。
しかし、それぞれの学問を専門にやっている人たちにとってはその違いは大きいものと認識されています。
例えば、物理学を専攻している学生が「物理学は法則を数式で理解したり予測することができるが、化学はやってみなければ結果が分からないので困る」と言っているのを聞きます。
これは彼らにとっては感覚的に違う学問という認識を持っているからなのでしょう。