株式の世界において使用される用語に関して、疑問を感じることがよくあります。
それは使っている言葉自体は簡単で日常的であるにもかかわらず、株式の世界で使用される場合には違う意味で使われることが多いからです。
例えば「募集」とか「売り出し」というのは日常生活でもよく聞く言葉ですが、株式では独特の意味があります。
それではそれはどういう意味なのでしょうか。
この記事では、有価証券の「募集」と「売出し」の違いを分かりやすく説明していきます。
「募集」とは?
有価証券取引の「募集」とは、不特定多数の投資家に対して「新規に発行された株式の取得の申し込みを勧誘する」ことで、「公募」とも呼ばれます。
「募集」は企業が資金調達のための増資を行う際にその引取先を確保するのが主要な目的です。
この時株式を発行するのは既に上場している企業であり、新規上場の企業の場合は「新規公開株」と言います。
「売出し」とは?
有価証券取引の「売出し」とは、不特定多数の投資家に対して「既に発行されている株式の売買の申し込みを勧誘する」ことで「売出」とも表記します。
対象となるのは50人以上の投資家で、同一条件(同一価格)による売買であることが条件です。
前述の「募集」と合わせて「PO=Public Offering」と呼ばれます。
これに対して50人以下の特定少数を対象にしたり、適格機関投資家のみを対象にしたものを「私募」と呼びます。
「募集」と「売出し」の違い
有価証券の「募集」と「売出し」の違いを、分かりやすく解説します。
この2つの言葉は証券用語として使用されているもので、有価証券取引の勧誘であることは同じです。
大きな違いは既存のものか新規のものかにあります。
つまり、「募集」は「新たに発行された有価証券の取得」の勧誘であり、「売り出し」は「既存の有価証券の売買」の勧誘です。
この違いは、そもそも2つの目的の違いに連動しています。
「募集」の目的は「増資による資金の調達」であり、「売り出し」の目的は「株式の流動性の確保」です。
「募集」の例文
「募集」の例文は以下のようになります。
・『執行役員は自社が発行した有価証券の募集等に関わる事務を行ってはいけないことになっています』
・『オンラインで有価証券の募集を行うためのシステムの構築を行いました』
「売出し」の例文
「売出し」の例文は以下のようになります。
・『売り出しとは50人以上の不特定多数の投資家に既に発行された有価証券の取引勧誘することです』
・『有価証券の売り出しを行う際には対象となる投資家に対して同じ条件を提示する必要があります』
まとめ
この記事では、有価証券の「募集」と「売出し」の違いを、解説してきました。
このように株式の世界で独特な用語の定義が使用されているのは、おそらくその起源が江戸時代に行われていた先物取引であるからでしょう。
その時代に当時の商取引の用語が独特な意味で使われ、それがそのまま現代まで続いているのです。