同じ「抜く」という漢字が用いられる言葉「抜粋」と「抜擢」には、どのような意味があるのか。
この記事では、「抜粋」と「抜擢」の違いを分かりやすく説明していきます。
「抜粋」とは?
「抜粋」とは、書物や作品の中から、優れた部分や必要な部分といった個所を抜き出すことです。
論文やレポートなどを書く際に必要と思われる文章を書物などから一部抜き出したものを「抜粋」と言います。
そのため、あくまでも、文章そのままを抜き出したものが「抜粋」で、少しでも自分の言葉が書き加えられたようなものは「抜粋」とは言えません。
類語には、「書き抜き」や「抜き写し」、「抜萃」などがあります。
「抜粋」の使い方
「抜粋」は、「抜粋する」や「抜粋した」といった形で用います。
また、「一部抜粋」や「抜粋の範囲」といった言葉もあります。
「抜擢」とは?
「抜擢」とは、多くの人の中から選び出し、その人に役目をつけることです。
多くの人の中から、この人だ、この人がぴったりだ、といった形で見込みのある人を選び抜くことが「抜擢」です。
類語には、「起用」や「採用」、「白羽の矢が立つ」などがあります。
「抜擢」の使い方
「抜擢」は、「抜擢する」や「抜擢された」、「抜擢した」といった形で用います。
また、「大抜擢」や「抜擢昇進」、「抜擢人事」などといった言葉もあります。
「抜粋」と「抜擢」の違い
同じ引き抜くといった意味でも、「抜粋」と「抜擢」は、全く異なった意味を持つ言葉です。
「抜粋」は、書物や作品の中から、優れた部分や必要な部分といった個所を抜き出すこと。
「抜擢」は、多くの人の中から選び出し、その人に役目をつけることです。
特に必要だと思われる、大切、重要だと思われる、といったものを引き抜くといった行為は同じですが、その内容は、「抜粋」の場合は文章で、「抜擢」の場合は人といった大きな違いがあります。
「抜粋」の例文
・『今回の論文は、非常に参考になる内容だったので気になる部分を抜粋し保存することにしました』
・『レポートの文字数制限もあり、どの部分をどの程度、抜粋すればいいのか非常に迷いました』
・『何でもかんでも、抜粋すればいいというものではありません』
・『私はどの部分を抜粋するかということから考えレポート作成を行います』
「抜擢」の例文
・『主題歌を歌う歌手に無名の新人歌手が大抜擢されました』
・『彼は特別に新人の中から抜擢され、新規プロジェクトに参加することになりました』
・『年齢や経験など問わずに、必要と思われる人材は、どんどん抜擢していきたいと思っています』
・『同期の中でも大抜擢という形で、私は主任になることができました』
まとめ
このように、「抜粋」と「抜擢」は、引き抜くといった意味以外、全く共通点を持たない言葉です。
大切な文章の一部を抜き出す際には「抜粋」。
重要な人物を抜き出す際には「抜擢」。
この違いが2つ言葉の違いの基本です。