警察が発表する統計資料などで使われる言葉に「検挙人員」と「検挙件数」があります。
よく似た意味で使われるこの言葉は具体的にどこが違うのでしょうか。
今回は、「検挙人員」と「検挙件数」の違いについて解説します。
「検挙人員」とは?
「検挙人員」とは、「警察などの捜査機関が検挙した被疑者の人数」を指す言葉です。
「警察などの捜査機関が犯罪の犯人であると疑われる被疑者の身柄をおさえること」を「検挙」といいます。
「逮捕」と似た意味で使われますが「逮捕」が法律に基づいて執行される高速行為を意味する法律用語であるのに対し「検挙」は明確な基準がない一般用語です。
通常は被疑者を警察署などに連行することを指すことを「検挙」と表現しますが、その後の捜査で無罪だと判明したり証拠不十分で釈放されたりなど犯人と特定されなかった場合は「検挙」に含まれません。
「検挙人員」が表すのは「検挙した被害者の合計人数」です。
調査機関のうちに犯罪の程度を問わず検挙した人員を合計した数であり複数犯の場合は複数人が統計に計上されます。
「検挙人員」の使い方
・『治安が回復し検挙人員も減少傾向が見られる』
・『犯罪の認知件数が増えているのに検挙人数が落ちているのは捜査能力の低下を表している』
・『検挙人員が急増したために留置場不足が深刻化している』
・『現在の警察力では検挙人員の急増に対応できない』
「検挙件数」とは?
「検挙件数」とは、「警察などの捜査機関が検挙した事件の数」を指す言葉です。
警察などの捜査機関は犯罪を事件単位で扱います。
ひとりの人間が連続して複数の事件を起こしていることが明らかな場合の取り扱いやつながりのある事件が関連性のない別々の事件とみなされた場合など正確性に欠けることもありますが「検挙件数」は「捜査機関が犯罪事件として認知している事件のうち被疑者の検挙に成功した事件の数」を意味する言葉です。
「検挙件数」の使い方
・『検挙件数の急増は治安の悪化を表している』
・『事件そのものの数が減っていれば検挙件数が減少するのも当然だ』
・『人口の少ない地域ほど検挙件数も少なくなる』
・『地道な捜査に力を入れたことで検挙件数が増加した』
「検挙人員」と「検挙件数」の違い
「検挙人員」が検挙した人数を指すのに対し「検挙件数」は検挙した事件の数を表すという違いがあります。
ひとつの事件に10人の犯人が関わっていたとき、警察が犯人全員を検挙すると「検挙人員」は10人ですが一つの事件なので「検挙件数」は1件です。
検挙した被疑者が10件の事件の犯人だった場合、「検挙人員」は1人ですが事件は複数として扱われているので「検挙件数」は10件です。
一つの事件に犯人は1人のみとは限りません。
複数人による犯罪が増えれば「検挙人員」が「検挙件数」を上回り、1人が複数の事件を起こすと「検挙件数」が「検挙人員」を上回ります。
まとめ
「検挙人員」と「検挙件数」は警察の捜査能力を直接表すものではありません。
参照するときは人口や過去の治安状況、犯罪発生率など複数のデータと組み合わせて活用してください。