この記事では、「レクイエム」と「鎮魂歌」【ちんこんか】の意味や例文、違いを分かりやすく説明していきます。
「レクイエム」とは?
死者を安らかに眠らせ、あの世へと無事に行けますようにと神様に祈る意味も込めて歌うのが「レクイエム」であり、ラテン語では古くから「安息を」という意味で認知されている言葉です。
カトリック教会では眠る死者が静かに墓で眠りにつけるよう心を込めてミサを捧げつつ家族や友人、恋人など愛する人の死を慈しみ、いかに自分が哀しい気持ちでいるかを伝えるわけです。
葬送曲としても使われており、ヴェルディやモーツアルトなど名だたる作曲家がラテン語のテクストに曲をつけて「死者のためのミサ曲」として贈られました。
とくに、災害や不慮の事故で突然命を絶たれた人に対して作曲したものを「レクイエム」と言います。
「鎮魂歌」とは?
霊を慰めて、魂を鎮めるために歌われるのが「鎮魂歌」であり、苦しまないようにする気持ちを込めて歌うものです。
カトリック教会では暴れだす霊の気持ちを抑えるためにも歌われているものであり、穏やかな曲調は聴く人の心も落ち着かせます。
家族と別れて哀しい気持ちでいる霊や、つらいと感じていつまでもあの世へ行けずにこの世をのた打ち回る死者に、いくらか穏やかな気持ちにさせるためにも歌で慰めてあげようという気持ちが込められているわけです。
殺人、テロ、紛争など理不尽なことで亡くなってしまった死者の霊魂に呼びかけるような歌により、残された人や讃美歌を担当する合唱隊が歌うわけです。
「レクイエム」と「鎮魂歌」の違い
「レクイエム」と「鎮魂歌」の違いを、分かりやすく解説します。
カトリック教会のミサで歌われる「レクイエム」は、死者に安息を与えるために捧げる聖歌であり、美しい声と音とともに神へと捧げられます。
「鎮魂歌」は宗教に関係なく、不慮の死を遂げただけに怒りを持って成仏できずにいる気の毒な死者の魂を慰め、天国へ行ってほしいと思う意味を込めて歌うという違いがあります。
しかし、残された人は愛する者を急に失った悲しみと怒りで取り乱した状態でありますので、その生き残った人の気持ちを穏やかにするという意味でも「鎮魂歌」を歌うわけです。
「レクイエム」の例文
・『阪神大震災のとき追悼の意味も込めて上田益氏はレクイエムを書いた』
・『Requiem Pacisは全曲ラテン語で書かれたもので、日本人が生み出したレクイエムだ』
過去に、大地震で多くの方が悲惨な亡くなり方したとき、どうか恨みなど持たずに、安らかに天国へと行ってもらいたいと思う気持ちを込めて「レクイエム」を捧げた作曲がいました。
日本人が生み出したキリスト教の流れを取り入れたRequiem Pacis(レクイエム パシズ)は海外でも人気があり、よく演奏される曲になっています。
「鎮魂歌」の例文
・『生き残った人の悲しみに耐えて、生きていることへのつらさを鎮魂歌で表す』
・『死者と生者の魂を鎮魂歌でうまくつなぎとめられるようにする目的がある』
亡くなった人以上に、生き残った人も悲しみに耐え、生きていることへの懺悔とつらさなどから心が穏やかにならない状態でありますので、その魂を穏やかにするためにも「鎮魂歌」を歌うわけです。
亡くなってしまった愛する者を失った悲しみに包まれた生きる者の魂も取り乱すことがないようつなぎとめられるために歌います。
まとめ
亡くなってしまった人が安らかにあの世へと旅立てるようカトリックでは「レクイエム」を奏で、「鎮魂歌」は気の毒な亡くなり方した人と心がいつまでもつながっていられるようどちらも穏やかな気持ちで繋がっていられるように歌うものと覚えておくといいでしょう。