沿岸部に気づかれる防御施設として「防潮堤」と「防波堤」があります。
このふたつの施設はどのような違いで区別されているのでしょうか。
今回は、「防潮堤」と「防波堤」の違いについて解説します。
「防潮堤」とは?
「防潮堤」とは、「潮位の上昇による陸地への被害を防ぐために築かれる堤防」を意味する言葉です。
川や海などに築かれる水害対策用の防護壁のことを「堤防」といいます。
平常時より水位が上昇してもある程度の高さで堤防が築かれていれば水が広がることなく周辺への水害を未然に防げる安全のために大きな役割を果たす設備です。
堤防は目的や種類によっていくかの名称が与えられ区別されます。
堤防の中でも「海に築かれる潮位の上昇による水害を防ぐための堤防」が「防潮堤」です。
海面の高さは一定ではありません。
一日の間でも満潮と干潮とでは海面の高さが大きく異なります。
潮の満ち引きによる海面の変化は安定的なものであり急激に上昇することはありませんが、水害が懸念されるのは異常気象に伴う潮位の変化です。
台風のような発達した低気圧が海上を通過するとき、海面は気圧差によって空に向かって吸い上げられます。
低気圧の勢力が弱ければ問題ないのですが強力な低気圧だと海面が陸の高さよりも上に引き上げられてしまい海の水が陸地に向かって流れだしてしまいます。
そのような海面の高まりのことを指す言葉が「高潮」です。
高潮が発生すると沿岸部は洪水のようになり大きな被害が発生してしまいます。
そのような被害を防ぐために海に築かれる陸地より高い堤防が「防潮堤」です。
「防潮堤」の使い方
・『海はずいぶんと荒れているが防潮堤のおかげで陸地に被害は出ていない』
・『防潮堤の限界ギリギリまで潮位が上昇している』
・『景観は損なわれるが安全を考えると防潮堤を建設すべきだ』
・『高潮による甚大な被害を教訓にしてより強固で大きな防潮堤を建設する計画が立てられる』
「防波堤」とは?
「防波堤」とは、「波を防ぐために築かれる堤防」を意味します。
波の立海では大きな波が来る取り口にまで押し寄せて被害を出すことがあります。
特に台風のような海が大きく荒れてしまう気象状況では10メートルを超える巨大な波が発生することもあります。
10メートルの波が陸地に押し寄せるというのは5階建てのビルに相当する質量の塊が向かってくるようなもので船や自動車はもちろん、鉄筋コンクリート製のビルでさえあっという間に破壊されてしまいかねないエネルギーを有しています。
そのような被害につながる波を陸地に到達させないため壁となって防ぐのが「防波堤」です。
大きく強固な壁で波を防ぐだけでなく波の勢力を弱めるような形状や配置により大きな波を小さくして被害を回避する「防波堤」もあります。
「防波堤」の使い方
・『沖合いに見えるのが防波堤だ』
・『安全のため防波堤は立ち入りが禁止されている』
・『台風でも不安がないのは防波堤のおかげだ』
・『防波堤がなければかなりの被害が出ていたと予想される』
「防潮堤」と「防波堤」の違い
「防潮堤」と「防波堤」どちらも水害対策の堤防ですが「防止する対象」に違いが見られます。
「防潮堤」は高潮を防ぐための堤防で「防潮堤」は波を防ぐための堤防です。
「防波堤」には波による被害を防ぐとともに湾内の海を穏やかにして船が発着しやすい環境を維持するという役割もあります。
まとめ
「防潮堤」と「防波堤」はどちらも沿岸部に築かれる堤防ですが防ぐ対象や利用目的に違いが見られます。
両方を兼ねて作られている堤防もあるので海に堤防を見つけたらなんのために作られているのか、どんな役割を果たしているのかに注目して区別しましょう。