頭の良い様子を表す表現として「機知」と「叡智」という言葉があります。
このふたつはどちらも似たような意味合いで使われていますが厳密にはどのような違いがあるのでしょうか。
今回は、「機知」と「叡智」の違いについて解説します。
「機知」とは?
「機知」とは、「状況に応じて対応できるような機転が利く知恵」という意味の言葉です。
「あらかじめ準備していなくても目の前の状況に応じて上手な対応が取れるような鋭い知恵」のことを「機知」と表現します。
もっとシンプルに説明するならば「アドリブ対応に長けた知恵」といったようなニュアンスで使われる言葉です。
知識や情報は暗記すれば増やせますが、ただ暗記しているだけでは本当の意味で知恵のある人にはなれません。
蓄えた知識や情報の中で現在何が必要なのか、どの知識を組み合わせるとアイデアが生まれるのか、どんな知識で危機を乗り切るかなど「目の前にある問題を柔軟に解決できる実践力のある知識」を指して「機知」と表現します。
凝り固まった知識ではなくひらめきや発想力など「知識の使い方」を意味する言葉であり、必ずしも知識が豊富では者であっても「機知」に優れていることがあります。
学者や専門家のように知識が豊富な人でも「機知」に欠けていることもあれば、初めて聞いたことでも即座に理解し有用な使い方を見出す「機知」に富む人もいます。
「機知」の使い方
・機知に優れる戦上手を軍師に据える。
・機知に富む会話で楽しい時間を過ごした。
・この芝居は機知にあふれる会話劇として評判だ。
・勉強はできるが機知には欠けているおもしろみのない人物。
「叡智」とは?
「叡智」とは、「物事の真理に通じるような優れた知恵」という意味の言葉です。
「叡智」が意味しているのは「現状で考えうる限りの最も優れた知恵」です。
究極的に優れた知恵や知識を表しており、物事を深く洞察し心理に通じる可能性を秘めた高い精神性を表しています。
「叡智」は具体的に形のあるものではなく概念として優れた知恵や知性を指す言葉です。
一般的には「人類の叡智」などの形で使われ、個人が持つ能力ではなく世界全体としての知恵や知識など集合知としての高いレベルを表します。
単に物を知っているというだけではなくその先にあるものや裏に隠されているものを見通す洞察力や観察力と言ったニュアンスが強くこめられています。
過去の知識を学んだ上で未来に向けてさらに発展させていくような前向きな知性を意味する表現です。
「叡智」の使い方
・環境問題解決のために人類の叡智を結集する。
・月面着陸が成功したのは当時の人類が叡智の粋を集めたからだ。
・叡智と呼ぶにふさわしい頭脳を持つ傑物。
・学術会議には世界各国の叡智が集められた。
「機知」と「叡智」の違い
「機知」と「叡智」の違いは「瞬発力」です。
「機知」とはその場でとっさに最適な判断ができる対応力に優れた頭脳を意味しています。
瞬発力が需要な要素であり知識の量や深みにかけていてもアイデアや発想力があれば「機知」に当てはまります。
「叡智」とは心理や真髄に通じるような深く優れた知識を指す言葉です。
じっくりと物事を考えて新しい発見を成し遂げるような質も量も優れる知識や知恵を表しておりとっさの対応力は含まれません。
まとめ
「機知」と「叡智」はどちらも人の頭脳を褒める時に使われる言葉ですが、それぞれが表している内容は大きく異なります。
どのような形で頭脳が優れているのかをきちんと確認しふさわしい言葉を使うようにしましょう。