みんな揃って同じことをする様子を指す言葉として「従う」と「準ずる」があります。
このふたつの言葉は結果として似たような状態になりますがそれぞれの意味は全く違います。
今回は、「従う」と「準ずる」の違いについて解説します。
「従う」とは?
「従う」とは、「後をついていき同じようにする」という意味の言葉です。
「先行するものや上に立つものの後を追い同じように行動すること」を指して「従う」と表現します。
もともとは単純に後ろについていくだけのことを指していましたが、前を行くものの進む道と同じ道を歩く所から転じて「人の言いなりになって行動すること」という意味で使われるようになりました。
現在では身分や肩書、ルールなど強制力を伴う関係性において「下の立場にいる者が上の立場にいる者の指示を聞いてその通りに行動すること」という意味で使われています。
はっきりとした上下関係にあることを「主従」と言い、主人の言うことを聞いてその通りにあれこれする下の人間を従者と呼びます。
従者のようにはっきりとした上下関係にあって下の立場として上の指図通りに行動することを指す言葉が「従う」です。
「従う」の使い方
・メンバー全員がリーダーの指示に従う。
・行政指導に従って改善する。
・指示書に従うのは当然だ。
・誘導員の指示に従って非難してください。
「準ずる」とは?
「準ずる」とは、「なぞらえて同じようにする」という意味の言葉です。
「準ずる」という言葉は「正社員に準ずる」のように対象となるものが前に来るのが正しい使い方です。
前に来る対象に「なぞらえて同じものとして扱う」というのが「準ずる」の意味であり、正式には同じではないものの実質的な扱いは同等のものとして扱うときに使われる表現です。
ほとんど同じ扱いではありますが全く同一というわけではなく多少の誤差も含まれます。
例えば、勝ち星の数が等しく優勝決定戦で負けてしまった力士は優勝こそしていないので賞金や商品はもらえませんが、優勝に準じる成績とみなされるので優勝したのと同じ扱いで横綱昇進などが検討されます。
このように正式な記録ではなく全く同じではないけれども扱いとしては同等に近いことを指す言葉が「準ずる」です。
見本や手本が対象である場合は「同じようにする」という意味になります。
同じ基準を適用したり同じ規格で作ったりといったようにそのままを取り入れて同じようにするのが「準ずる」です。
「準ずる」の使い方
・具体的な基準については先例に準ずることになった。
・支部のルールは本部に準ずるものとする。
・契約社員の待遇は正社員に準ずるものとする。
・取り消し手続きのやり方は訂正手続きに準ずる。
「従う」と「準ずる」の違い
「従う」と「準ずる」の違いは「意志の有無」です。
「従う」は先例を参考に後に続く者が意志を持って同じようにしようとする様子を表します。
指示や命令などはありますがそれを聞くかどうかは後に続く者の意志次第であり、できる限り近づけようとすることもあれば手を抜こうとすることもあります。
「準ずる」は手本や見本などと同じようにすることを意味します。
はっきりとした明確な基準と同じにすることを表しており人の意志や判断が介在する余地はありません。
意識して指示を守り行動するのが「従う」、機械的に同じようにするのが「準ずる」という違いがあります。
まとめ
「従う」と「準ずる」は似ているようで全く意味が違う言葉です。
それぞれがどんな様子を表しているのかに注目して使い分けましょう。