大学の法学部などで法律を学んでいると頭が痛くなることはたくさんあります。
その一つが用語の問題です。
学問にはそれぞれその分野でしか使われない言葉というのが存在しますが、法学の世界ではそれが極端に多い上に、一般的な言葉と文字は同じだが独特の定義がある場合が多く、混乱の原因にもなります。
そんな言葉の例が「適用」と「準用」です。
それではこれらの言葉の意味はなんでしょうか。
また、違いはどこにあるのでしょうか。
この記事では、「適用」と「準用」の違いを分かりやすく説明していきます。
「適用」とは?
「適用」という言葉は、一般的には「当てはめて用いる」事です。
いい換えると「あるルールを実際の案件に当てはめる」ということもできます。
この言葉は様々なシチュエーションで使用されますが、法律の分野で使われる時には「条文を実際のケースに当てはめる」という意味になります。
英語では、「apply」が最も近い意味になります。
スマホなどで使われる「アプリ」という言葉は、元々は「適用業務プログラム」という意味の「application program」が元になっています。
「準用」とは?
「準用」とは、一般的にはほとんど使用されない言葉ですが、法律の中では頻繁に出てくる言葉です。
意味としては、「特定の条文を類似する別のケースにも当てはめる」ということになります。
通常は条文の補足として別のケースにも適用可能である旨の文章が追記されていて、その文章の中で使用されます。
英語では、法理知用語として「mutatis mutandis」が使われます。
「適用」と「準用」の違い
「適用」と「準用」の違いを、分かりやすく解説します。
ここで違いを明確にする上での前提としては、この2つの言葉を法律用語として見るということにします。
その上での違いは明確です。
「適用」が法律の条文のそのままをあてはめるのに対して、「準用」は、条文を類似のものにも適用できるように、定義しておくという違いです。
例としては、「Aである時Bの罰則を課する」という条文の補足で、「この規定はCである時に準用される」という文言がある場合は、AのケースでもCのケースでも同じ扱いにする事ができるということです。
「適用」の例文
「適用」の例文は以下のようになります。
・『残業手当の基準を適用するとこの金額になります』
・『適用可能と思われる条文はすべて検討しましたが、本件には適用できませんでした』
「準用」の例文
「準用」の例文は以下のようになります。
・『準用は、類推適用とは異なる方法です』
・『法律の条文の中で定義されている準用の規定を守る必要があります』
まとめ
この記事では、「適用」と「準用」の違いを、解説してきました。
法学の分野に特化した言葉の定義というのは、前述のようにここで挙げた2つ以外にもたくさんあります。
例えば、「相殺(そうさい)」という言葉は、一般的には「前期の黒字は今期の赤字で相殺されました」のようにプラスマイナスゼロのような意味で使われますが、法律用語としては「2者間の債権の対等額だけを消滅させる」ことを言います。
つまり債権の扱いに関することのみに使われる言葉なのです。
こんなところにも法律が一般の人にはわかりにくい理由があるのかもしれません。