自己責任という言葉をよく聞くようになりました。
「通常はこういう使い方はしませんが、やってみたい方は自己責任でお願いします」というような言い方をするのが主流ですが、ここで「自己責任」と言うのは、よく考えてみればかなりおかしな表現です。
実は、この言葉はこの文章で警告している人が「何があっても自分に責任はありません」と言いたいだけなのです。
もしそうならなぜそう言わないで、自己責任という曖昧な言葉を使うのでしょうか。
このように責任とか義務という言葉を使うときにはかなり注意しなければなりません。
それでは、「責務」や「義務」とはどういう意味でしょうか。
また、違いはどこにあるのでしょうか。
この記事では、「責務」と「義務」の違いを分かりやすく説明していきます。
「責務」とは?
「責務」とは、「責任と義務」を一緒にした言葉で、立場や状況によって「やらなければならないこと」を示したものです。
通常は「責任」が「自由に対して生じること」で、「義務」は「社会生活において生じること」と解釈することができます。
英語では責任と義務の両方の意味を持つ「duty」が近いでしょう。
「義務」とは?
「義務」とは、前述のように「社会的、道義的な意味でやらなければならないこと」という意味です。
つまり、何かの対価として行うべきことではなくて、社会人として生きていく限りはやらなければならないことというのが基本になっています。
英語では、「obligation」になります。
「責務」と「義務」の違い
「責務」と「義務」の違いを、分かりやすく解説します。
これらの言葉は、「人が行うべきこと」という意味で使われる言葉ですが、成り立ちが違います。
すなわち、「責務」という言葉は「責任と義務」なので「義務」を含むということです。
従って、「義務」よりも「責務」の方広くかつ強く「行うべきこと」を迫ってくる言葉なのです。
「責務」の例文
「責務」の例文は以下のようになります。
・『会社の責任者としての責務を果たすことが求められています』
・『医師の責務は患者の病気を治すことです』
「義務」の例文
「義務」の例文は以下のようになります。
・『日本において義務教育の期間は9年間です』
・『国民の三つの義務は勤労、教育、納税です』
まとめ
この記事では、「責務」と「義務」の違いを、解説してきました。
序文で述べた「自己責任」の話ですが、「私の責任じゃない」という場合に「自己責任」という言葉を使うのは「投資家の自己責任原則」から来ていると思われます。
これは、投資に関連した行動がその人のリスク評価の結果行われた結果として損失があったとしてもその責任を自分以外に求めてはいけないという原則です。
これは当然の話なのですが、この原則の背景には投資家がリスク判断ができる能力を持っていることとそれに必要な情報が関係者から開示されているというものがあります。
そう言った意味では、冒頭の件で重要なのは、聞いた人がリスク判断ができる程度の情報を提供しているかどうかということになります。
ここの義務を怠った状況での自己責任原則は成り立ちません。