遠くを見ることを表す言葉として「見渡す」と「見通す」があります。
このふたつの言葉は具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
今回は、「見渡す」と「見通す」の違いについて解説します。
「見渡す」とは?
「見渡す」とは、「ある地点から周囲一体を遠くまで見ること」を意味する言葉です。
「見渡す」には「ある程度広い範囲を遠くまで見る」という意味合いがあります。
主体となる者が「扇形に首をふるような形で遠くまで見る動作」が「見渡す」のイメージです。
具体的な一点ではなく特に決められていない広い範囲を見る動作が「見渡す」なので「ある程度周囲が開けていて遠くまで遮るものがないところでどことはなしに全体をながめる」ような「広くあいまいに遠くを見る」様子を指して「見渡す」と表現します。
一点をじっと見つめたり手近なところだけを見ている場合には「見渡す」という表現は用いられません。
「見渡す」の使い方
・『崖の上に立って太平洋を見渡す』
・『天守閣から城下町を見渡す』
・『頂上からは見渡すかぎりの雲海が広がっていた』
・『舞台袖から会場を見渡すと、すでに人でいっぱいだった』
「見通す」とは?
「見通す」とは、「ある地点から遠くの地点までをまっすぐに見ること」を意味する言葉です。
「見通す」には「障害物のない直線上を最初から最後まで一目で見る」という意味合いがあります。
「現在地から遠く離れた場所にあるものを何にも邪魔されることなく目視する」のが「見通す」であり「視線を遮る障害物の間をかいくぐって直接見る」ことを意味しています。
ある程度距離の離れた場所を見ることを意味する言葉なので近い場所を見る場合には用いられません。
厳格な基準はありませんがひとつの例として「視距」というものがあります。
視距とは「自動車を運転する者が道路の前方方向を見通せる距離」を表したもので「1. 2メートルの高さから10センチの物体の頂点を見ることのできる距離」を「見通す」の基準にしています。
「見通す」の使い方
・『窓から東京スカイツリーを見通す』
・『廊下の端から端まで見通す』
・『この辺りは高い建物がないので自宅から学校まで見通すことができます』
・『あのビルがなければ富士山を見通すことができそうだ』
「見渡す」と「見通す」の違い
「見渡す」と「見通す」の違いは「視線の向かう方向」です。
「見渡す」は現在地点を中心に左右の一定範囲を広く遠くまで見ることを意味します。
視線の向かう方向は扇形に広がるイメージで、特定の一点を見つめる線ではなく面として目の前の光景をとらえています。
「見通す」は現在地点から遠く離れた一点を結ぶ直線方向に視線が抜けていることを意味します。
遮るものがなく遠くまで見ていますが視線の向かう方向は線のようににまっすぐ一方向に伸びています。
まっすぐ遠くを見ていて首を左右に振ると「見渡す」、首を振らず一点を見つめていると「見通す」となります。
遠くを見るという点は共通していますが、視線によって見える光景が面なのか線なのかという違いがあります。
まとめ
「見渡す」と「見通す」は似ているようで全く違う意味を持つ言葉です。
それぞれの言葉の表している意味を正しく理解して使いましょう。