「難航」と「難渋」はどちらも物事が順調に進まない際に使用する言葉ですが、細かな意味合いが異なるため状況によっては使い分けが必要になります。
この記事では、「難航」と「難渋」の違いを分かりやすく説明していきます。
「難航」とは?
「難航」はもともと「悪天候によって船舶などの航行が極めて難しくなること」という意味で使用されていましたが、転じて現在では「物理的もしくは精神的な支障が生じて物事がスムーズに進行しないこと」を意味する言葉として使用されています。
「難渋」とは?
「難渋」は「物事の進行が順調に進まないこと」や「物事が進まないことによって困難に陥り苦労する」といった意味を含む言葉です。
そのほか、「困惑したり迷惑に思ったりすること」や「生活に困窮すること」、「他の人に貸したり与えたりする行為を惜しむこと」などの意味も持ち合わせています。
「難航」と「難渋」の違い
「難航」と「難渋」は双方とも「何らかの支障が発生して物事が滞りなく進まない」といった意味を持ちますが、詳細な意味合いに違いがあります。
「難航」は「物理的あるいは精神的な困難が生じて物事がスムーズに進行しないこと」を指し、物事が滞ることで難しい状況に陥る場面で使用されます。
一方、「難渋」も「何らかの支障によって物事の進行が妨げられること」という意味を持ちますが、「物事が順調に運ばないことで苦境に陥り、さらに苦労する」といった「よりネガティブな見通し」を暗示する意味合いがあります。
「難航」の例文
「難航」は「何らかの支障によって物事が予定通り進まないこと」を意味し、特に報道などのフォーマルな場面で多用されています。
なお、「航行が難しい」という本来の意味で使用される例もありますが、この場合に該当する乗り物は運航が天候に左右される「船舶」や「航空機」などを指すことがポイントです。
・『出演者全員のパフォーマンスが素晴らしかったので、審査が難航しているようだ』
・『事件の捜査は難航していたが、鍵を握る人物の存在が浮上してから急展開した』
・『なかなか意見がまとまらないため、次期制度に関する交渉は難航を極めた』
・『台風の影響で父が乗った漁船が難航している』
「難渋」の例文
「難渋」は「何らかの支障が発生することで物事が順調に運ばないこと」に加えて、「その結果苦境に立たされて苦労する」といったニュアンスが含まれています。
上記のほか、「金銭的に苦しいこと」、「人に対して借りたり与えたりすることに消極的であること」などの意味で用いられるケースもあります。
・『製造工程の変更が重なったため、現場の作業が難渋している』
・『景気がなかなか戻らないので、今後も運営が難渋するだろう』
・『感染症拡大の影響でアルバイトの勤務日が激減し、生活が難渋している』
・『あの高齢者は自分の孫にお年玉をあげることにさえ難渋しているらしい』
まとめ
「難航」と「難渋」は同じような意味を持ちますが、「より消極的な結果を含んでいるかどうか」に違いがあることが分かります。
両者の意味合いを理解して、場面に応じて使い分けましょう。
ぜひ言葉の豆知識として参考にしてください。