物事の終わりを見極めるときに使われる言葉に「引き際」と「潮時」という表現があります。
この2つの言葉はどのような違いがあるのでしょうか。
今回は「引き際」と「潮時」の違いについて解説します。
「引き際」とは?
「引き際」とは、「職務や立場から離れる時期」を意味する言葉です。
「引き際」が表すのは「手を引くタイミング」です。
関わりを断つことを「手を引く」と表現しますが、関わりを断つ時のことを指す言葉として「引き際」という表現を使います。
本来の意味からすると「決断したちょうどその瞬間」を指しますが、一般的には「離れることを見極めた時期」といったようなある程度広い範囲を指す言葉として用いられています。
「引き際」は良し悪しで評価されます。
ちょうどいいタイミングで離れることを「引き際が良い」いつまでも離れることなくしがみついている様子を「引き際が悪い」と表現します。
「物事から手を引くタイミング」という意味から転じて「職務を離れるときのふるまい」という意味でも使われる言葉です。
仕事から離れる時期だけではなくどうやって離れるのか、どのように決断するのかといった身の処し方や身の振り方までを含めて「引き際」といいます。
「引き際」の使い方
・『長年経営を指揮していた彼だが、実に見事な引き際で社長職を離れた』
・『若くしてトップにのぼり詰めたが、晩年はいつまでも立場にしがみつき引き際の悪さが目立った』
・『苦労して手に入れた立場なのに実にあっさりとした引き際で後進に道を譲ったのには驚いた』
・『トップアスリートとして引き際だけは汚したくない』
「潮時」とは?
「潮時」とは、「物事を行うのにとてもいい時期」を意味する言葉です。
本来の「潮時」の意味は「ベストタイミング」です。
何かを実行するときにこれ以上はないという絶好のタイミングを意味すると気に使います。
「潮時」の本来の意味は「海の潮の満ち引きがちょうどよい時間帯」を意味します。
漁師が漁に出る時、満潮の時だと魚が豊富に取れることから漁に出るベストなタイミングのことを「潮時」と呼びました。
そこから転じて漁以外の物事でもいい時期のことを「潮時」と呼ぶようになり今でも使われています。
「潮時」が「辞める時期」という意味で使われる事がありますがこれは誤用です。
本来の「潮時」に仕事をやめたり立場を離れるという意味はありません。
もともとの意味から考えれば「職務を離れるのにいい時期」という意味で「潮時」を使うことなく単体で「辞めるタイミング」という意味で使うのは間違いです。
「現在の職を離れて新しい人生をスタートするのにいいタイミング」という時期で「潮時」が使われていたことからこのような誤用が広まったとされています。
「潮時」の使い方
・『楽しくやっていたがそろそろ潮時だろう』
・『はやる気持ちを抑えて潮時をじっと待つ』
・『潮時がきたので急いで出発する』
・『もうすぐ潮時を逢えるとあって準備に余念がない』
「引き際」と「潮時」の違い
「引き際」と「潮時」の違いは「関係性の変わり方」です。
「引き際」は仕事や立場を離れるなど関わりを絶ち手を引く時期を意味します。
関わりを断つときにのみ使われる表現で参加したり関わったりするような関係性の変化には使いません。
「潮時」は何かをやるのにいい時期を意味する言葉です。
基本的には積極的に関わっていくのにいい時期を指す表現で関係性を断つ時には使いません。
まとめ
「引き際」と「潮時」を同じような意味だと考えるのは誤用です。
言葉本来の意味を正しく理解し誤用しないようにしてください。