この記事では、特許権の「抵触」と「侵害」の違いを分かりやすく説明していきます。
「抵触」とは?
特許権の「抵触」とは特許の権利が、別の権利者が専有している権利と重なってしまっている状態です。
特許権と「抵触」が起こる例の代表と言えば意匠権との「抵触」でしょう。
他の権利者が意匠権を専有していて、これと類似したデザインの無断使用を禁止しますと宣言しているデザインと、特許を出したもののデザインが偶然一致していた場合です。
意匠権の権利者がその意匠を使えば特許権の侵害になってしまいますし、特許権の権利者がその特許を使えば意匠権の侵害になります。
こういった両方とも正当な権利を持っているのに関わらず、その権利を実施すると他者が独占する権利も実施してしまうことになるという状態が特許権に関する「抵触」です。
「侵害」とは?
特許権の「侵害」とは、誰かが専有する権利を持っている特許の内容を、権利者の許可無く実施する、あるいは実施されたことを指す言葉です。
誰かが発明した画期的な機能や構造を自社の商品に勝手に組み込んで製造する、特許が許諾された商品を無断で模倣して自社のオリジナル商品として販売するなどが特許権の「侵害」になります。
特許権は優れたものやそれを発明した人を、こういった無断の後追いが発生することで生まれる損失から守るためのものです。
なので特許権を「侵害」すれば罰を受ける事になりますが、その場合「侵害」したから一律何万円の罰金という形ではなく、「侵害」した回数と、それによって得られるはずだった利益で、賠償の金額が変化します。
特許権の「抵触」と「侵害」の違い
特許権の「抵触」と「侵害」の違いを、分かりやすく解説します。
「抵触」は権利を持っている特許が他者の持つ権利と一部重複していることで、「侵害」は権利を持っている特許の使用許可を出していないにもかかわらず使用実施されていることです。
自分に正当な権利がある特許でも、他者の権利に「抵触」している特許を実施することは、必然的に他の誰かの権利を「侵害」することになります。
ですが誰かに「侵害」されている自分の特許を実施しても、他の誰かが持つ権利を「侵害」することはありません。
また特許権が「抵触」している状態はお互いがお互いの権利を「侵害」しあっている、いわば両方被害者であり加害者の関係性です。
しかし単純に「侵害」されている場合、特許権の専有者は一方的な被害者であり、その問題に関して加害者として扱われる要素は全くありません。
まとめ
特許の無断実施を指す「侵害」という概念が先にあり、権利が他者の権利と被っているせいで、どちらが権利を行使すると必ず相手の権利を「侵害」してしまうというのが、特許権における「抵触」と「侵害」の関係性です。
「侵害」は一方的な悪者として賠償を求めれば終わりますが、「抵触」は事前に気付けずどちらも認められてしまうと、解決は困難になるでしょう。