江戸時代に流行した絵画として「浮世絵」と「錦絵」があります。
有名作品も数多く存在しますが「浮世絵」と「錦絵」はどこが違うのでしょうか。
今回は、「浮世絵」と「錦絵」の違いについて解説します。
「浮世絵」とは?
「浮世絵」とは、「江戸時代に誕生した文化や風俗をいきいきと描いた日本画」を意味する言葉です。
「浮世絵」の「浮世」とは「世の中」や「世間」といった意味合いを持つ言葉です。
市井に暮らす人々の日常の営みや普段の生活風景など身近でありふれたものを描き出した日本画を指して「浮世絵」といいます。
「浮世絵」というのは画風を指す言葉であり技法そのものを定義したものではありません。
一般的に「浮世絵」というと木版画がイメージされますが肉筆のものも存在します。
庶民に普及するきっかけとなったのが木版画であり世間に出回って椅子数も圧倒的に木版の「浮世絵」が多いのですが、絵師の手による肉筆の「浮世絵」は貴重品として取引され数は出回っていませんが現在でも美術品として高い価値が認められています。
描かれた題材は「浮世絵」という名前の通り世の中のありとあらゆるものが対象となっており風景画や美人画といったポピュラーなものから仕事場の風景や犬猫など身近な題材や妖怪など創作性の強いものまで多種多様なジャンルの広さは他の絵画には見られない特徴です。
「浮世絵」の使い方
・『美術館に浮世絵を観に行く』
・『江戸時代の浮世絵はありふれたものでとても安価だった』
・『江戸時代に興味をもったのがきっかけで浮世絵を集めることにした』
・『猫の浮世絵ばかりを集めて企画展を開く』
「錦絵」とは?
「錦絵」とは、「多色刷りで色鮮やかに製作された木版の日本画」を意味する言葉です。
木版による絵画の印刷技法は江戸時代に誕生しました。
当初は単色で絵柄も線画のような単純なものでしたが、時代が経つにつれて技術は成熟し複数の木版を組み合わせた多色刷りの技法が確立されます。
「多色刷りの技法を用いて製作された色鮮やかな日本画」が「錦絵」です。
最大の特徴である多色刷りを活かすために題材も美人画や風景画など多数の色が使われているものが多く、江戸時代の後期に製作された木版美術の多くは「錦絵」の技法によって製作されています。
「錦絵」の使い方
・『錦絵コレクターに秘蔵の作品を見せてもらう』
・『200年前に刷られたとは思えないほど色鮮やかな錦絵』
・『同じ錦絵でも刷られた時期によって色合いが異なる』
・『錦絵は絵師と彫師と刷り師の技術の決勝である』
「浮世絵」と「錦絵」の違い
「浮世絵」と「錦絵」の違いは「多色刷り」です。
「浮世絵」は文化や風俗を描いた江戸時代の日本画を指す言葉です。
「浮世絵」は肉筆画との木版画にわかれますが木版のうち多色刷りの技法で製作された色鮮やかなものを「錦絵」といいます。
「錦絵」は「浮世絵」の一ジャンルですが江戸時代後期にはほとんどが多色刷りで製作されるようになったことから「浮世絵」と「錦絵」がほぼ同じ意味合いで使われていました。
現代では単色のものと多色のものを区別して「浮世絵」と「錦絵」を使い分けています。
まとめ
「浮世絵」と「錦絵」は同じ意味で使われることもあるため混同しがちですが本来の意味には違いがあります。
それぞれの言葉の意味を正しく理解して使い分けてください。