報酬として支払うお金を意味する言葉として「工賃」と「賃金」があります。
このふたつの言葉の違いはどこにあるのでしょうか。
今回は、「工賃」と「賃金」の違いについて解説します。
「工賃」とは?
「工賃」とは、「物を制作した対価として支払う報酬」を意味する言葉です。
仕事や作業に対して支払う報酬のうち「物を作り上げたり加工したりした労務の対価として支払うお金」が「工賃」です。
一般的には建築や修繕など工事の対価として支払う費用やプログラムやアプリケーションの作成など実体があるか否かを問わず「作成したり作成したものを手直ししたりなど習得した技術を使い労働を通じてものを作り上げることに対して発生する報酬」を「工賃」と言います。
広義では「工事にかかる費用」を「工賃」と呼びます。
本来の意味の「工賃」は労務に対して発生するお金であり人に対して支払う報酬を指しますが、広義では人に支払う報酬の他に人件費や機材費など工事にかかるすべての費用を含んだ総額を指して「工賃」と表現します。
「工賃」はものを作る仕事限定で使われる表現なので物を作らない仕事に対する報酬には用いられません。
接客業などは「工賃」ではなく大工や内装業者など手を動かしてものを作る仕事のみに使われます。
ただし、同じものを作る仕事であっても料理人や画家などには「工賃」という言葉を使うことはありません。
住宅や設備、プログラムなど実用としてある程度長い間使えるような物を材料や道具を使って作り上げる仕事に対する報酬にのみ「工賃」という表現が用いられます。
「工賃」の使い方
・『大工に工賃を支払う』
・『工事期間が伸びると工賃の負担が重くなる』
・『工賃を下げると工事品質も下がる恐れがある』
・『適切な工賃を支払うことでモチベーションが維持される』
「賃金」とは?
「賃金」とは、「雇用者が労働者に対して支払う労働の対価としての金銭」を意味する言葉です。
「賃金」を簡単に説明するならば「働いた成果としてもらえるお金」です。
労働基準法にも使われている法律用語の一種であり法的な定義によると「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」を「賃金」としています。
毎月の給料やアルバイト料のほか残業代やボーナスなど定期不定期を問わず労働の報酬として受け取るすべてのお金が「賃金」です。
経済学的には労働というサービスを売った売却金が「賃金」にあたります。
「賃金」の使い方
・『物価は上がっているのに賃金は上がらない』
・『賃金の引き上げを求めテストが行われた』
・『男女間の賃金格差が問題になっている』
・『業務負担が増えたので賃金の見直しを要求する』
「工賃」と「賃金」の違い
「工賃」と「賃金」の違いは「労働の内容」です。
「工賃」は物を作ったり加工したりする労働に対して支払われる報酬を意味するのに対し「賃金」は物を作る仕事を含む労働全般に対して使える言葉です。
「工賃」は「賃金」の一種であり「工賃」を「賃金」と言い換えることはできますが、「賃金」を「工賃」と言い換えることはできません。
その他にも障害者自立支援法では正式な雇用契約を結んで支払うのが「賃金」、雇用契約を結ばずに支払うのが「工賃」と区別しています。
まとめ
「工賃」と「賃金」はどちらも労働の対価として発生する報酬を指しますが労働の内容に違いがあります。
どちらも一般的に使われている言葉なので正しい意味を覚えておきましょう。