似たような意味で間違えやすい表現に「併行」と「並行」があります。
このふたつの言葉はどのような基準で使い分けられているのでしょうか。
今回は、「併行」と「並行」の違いについて解説します。
「併行」とは?
「併行」とは、「同時に進むこと」を意味する言葉です。
洗濯しながら掃除をしたり企画書を書きながら伝票を整理したりなど「複数の物事を同時に行うこと」を意味する言葉として「併行」が使われます。
「併行」の「併」は「複数のものが合わさる」という意味を持ちます。
複数のものが合わさって一つになることを「合併」他の国を飲み込んで一つになることを「併合」と表現することからもわかるように「別々の存在である複数のもの」を意味する際に用いられる表現です。
「併行」とは「別々の存在である複数のものがまとめられて同時に行われること」を表す言葉です。
一般的には仕事や作業などに対して用いられる表現であり「同じ時間で複数の物事を取り扱うさま」を表します。
取り扱う物事同士の重要性に大きな差はなくどれも同じ程度重要で上下関係が存在しない場合に「併行」という表現を使います。
「併行」の使い方
・『企画書作成と併行して報告書を書き上げる』
・『通常業務と新人教育を併行して進めるのは負担が重すぎる』
・『交渉と併行して情報を収集する』
・『英会話と平行して英文法も学んでいる』
「並行」とは?
「並行」とは、「複数のものが並ぶこと」を意味する言葉です。
「並行」は「隣り合って並んでいる様子」を表すときに用いられることが多い表現です。
駐車場に車が隣り合わせで並べられていたり道が並んで通っていたりなど「別別のものが交わることなく隣り合わせにある状態」を指して「並行」と表現します。
基本的には物理的な位置関係としての隣り合わせを意味することが多い表現ですが、そこから転じた比喩表現として「隣り合っているような近しい関係」という意味合いでも使われます。
「並行」が指す複数の物事は位置関係としては隣り合わせであっても物事同士の関連性は薄く別々に進んだり処理されたりなど独立して存在します。
「並行」の使い方
・『駐車場にトラックと自家用車が並行して駐めてある』
・『並行した道がどこまでも続いている』
・『鉄道と平行して遊歩道が整備されている』
・『親子が平行して歩いている』
「併行」と「並行」の違い
「併行」と「並行」はどちらも「一緒に進む」という意味で使われる言葉です。
まったく同じ意味で使われることもありますが「併行」がひとつの主体が複数のものを同時に取り扱うことを指すのに対し「並行」は独立した複数の存在がそれぞれ別個に動いた結果として一緒になっている様子をあらわす際に使われます。
「ふたつのプロジェクトを併行する」という場合はひとりがふたつのプロジェクトを取り扱っていることを意味しますが、「ふたつのプロジェクトを並行して進める」と表現されるのはそれぞれのプロジェクトに別々の責任者が存在するときです。
まとめ
「併行」と「並行」はまったく同じ意味で用いられることも多く使い分けの難しい言葉です。
同じ状況でも視点が変わるとふさわしい表現が変わるので注意してください。