この記事では、「覆う」と「被う」の違いを分かりやすく説明していきます。
「覆う」とは?
「覆う(おおう)」とは、「あるものが広範囲に広がってその下に存在しているものを隠す」を意味しています。
「覆う」には、「あるものを別のものの上に広げることで外部や他者からさえぎること」の意味もあります。
「覆う」の表現はさらに、「闇があたりを覆う」のように「特定の空間を隙間なくいっぱいに満たすこと」も示すことがあります。
「覆う」は、「客観的な事実を包んで分からなくする」の意味も持っています。
「被う」とは?
「被う(おおう)」は「覆う(おおう)」の同音同義の異字であるため、基本的に上で紹介した「覆う」のすべての意味を持っているとされます。
ただし「被う」の「被」の漢字は「被せる(かぶせる)」とも読むため、「あるものを別のものの上からかぶせて保護する」といった意味のニュアンスが強くなっています。
また「被う」には「上からかぶせるの意味の類推」から、「本当のことが何であるのかを分からないようにして隠す」の意味合いもあります。
「覆う」と「被う」の違い
「覆う」と「被う」の違いを、分かりやすく解説します。
「覆う」と「被う」は国語辞典の項目としては同じ項目に並べて書かれていて、意味の違いがない同音の同義語とされています。
一般的には、「被う」ではなく「覆う」という常用漢字表にある漢字表記のほうが推奨されています。
ただし「覆う」は「そのものが広がって下のものが見えなくなる」の意味のニュアンスが強いのに対して、「被う」のほうは「そのものが広がることよりも、上からあるものを他のものにかぶせて隠す」のニュアンスが強い点に違いがあります。
また「覆う」よりも「被う」のほうが、「上からあるものを被せて守ってあげる+包み隠すかたちで何が事実であるのかを分からないようにする」のニュアンスが強くなっているという違いも指摘することができます。
「覆う」の例文
・『秋の散歩道は街路樹として植えられているイチョウの黄色の葉っぱで覆われていて、まるで黄色の絨毯が敷き詰められているようでした。』
・『東京五輪の各種目を開催したスタジアムは、コロナ禍さえなければ国内外の大勢の観客の熱気で覆われていたはずです。』
「被う」の例文
・『イラクやシリアの内戦の状況を現地で取材していると、目を被ってしまうほどのむごたらしい光景が広がっていました。』
・『類人猿の身体は体毛ですっぽりと被われていますが、ホモ・サピエンス・サピエンスであるヒトはその体毛の毛皮を進化で失ってしまったのです。』
まとめ
この記事では、「覆う」と「被う」の意味の違いを分かりやすく解説しましたがいかがでしたか。
「覆う」とは「上部から何かを広げてその内部にあるものを隠す+あるものが広がってその下にあるものを視覚的に隠す」を意味していて、「被う」は「あるものを他のものの上にかぶせて隠したり守ったりする・事実を分からなくする」に意味の重点がある違いがあります。
「覆う」が常用漢字表にある一般的な漢字表記になります。
「覆う」と「被う」の意味の違いや例文を詳しく知りたい時は、この記事の解説をチェックしてみてください。