8世紀の日本において、軍人として活躍した坂上田村麻呂という人物がいました。
この人は天皇から征夷大将軍に任命され、当時朝廷からは蝦夷と呼ばれて疎まれていた地方豪族を倒して東北地方を平定した人物として知られています。
元々は蝦夷を討伐するための任務を持っていた征夷大将軍はその後軍人の最高権力の地位として受け継がれ江戸時代の将軍制度に繋がります。
さて、ここで出てきた「平定」とはどういう意味でしょうか。
また、同じような意味の「制圧」とはどう違うのでしょうか。
この記事では、「平定」と「制圧」の違いを分かりやすく説明していきます。
「平定」とは?
「平定」とは、「平」が「平ら」で、「定」が「安定させる」という意味なので、合わせると「平らに安定させる」という意味になります。
これは言い換えると「争いが起きないように鎮める」とも言えます。
一般的には広い範囲での出来事に関して使われます。
英語では、「settlement」が近いでしょう。
「制圧」とは?
「制圧」とは、「制」が「抑える」という意味であることから、「圧力をかけて抑える」ということを表す言葉です。
一般的には「武力などの力を持って押さえつける」という時に使用されます。
英語では、「suppression」が近いでしょう。
「平定」と「制圧」の違い
「平定」と「制圧」の違いを、分かりやすく解説します。
この2つの言葉は、どちらも「武力で抑える」という文脈で使われるということでは同じです。
実際に使用される場面も同じようなものであることが多いとも言えます。
しかし、ニュアンスの違いはあり、一つはレベルであり、「制圧」が「抑え込む」レベルであるのに対して、「平定」が「反撃できないくらいに打ち負かす」レベルなので、「平定」の方が進んだ状態ということになります。
また、規模も違います。
「制圧」は一つの軍隊や少人数のグループに対しても使えますが、「平定」は地方や国くらいの大きさになります。
「平定」の例文
「平定」の例文は以下のようになります。
・『坂上田村麻呂の東北地方の平定には20年の歳月が必要でした』
・『徳川家康は戦国の世を終わらせ、日本全土を平定しました』
「制圧」の例文
「制圧」の例文は以下のようになります。
・『反対勢力を武力によって制圧するのは危険です』
・『軍部の巨大勢力が国の首都を制圧しました』
まとめ
この記事では、「平定」と「制圧」の違いを、解説してきました。
東北地方を平定した人物としてご紹介した坂上田村麻呂ですが、実は最終的な平定までに20年もかかりました。
蝦夷と呼ばれた地方勢力が大きな力を持っていたということもありますが、結局はそれぞれの勢力は既得権益を犯されることに危機を感じていたからです。
そもそも、この平定という言葉の使われ方にしても朝廷側からの見方にすぎず、蝦夷にしてみれば自分たちが平らにしていた地方をあえて戦乱にしたのは朝廷ということになります。
歴史における出来事はすべてどちら側から見たかによって変わるという例です。