ビジネス文書として送る書面の最初や最後で挨拶する場合によく使用される表現があります。
現在ではネットで検索するとテンプレートとして使えるものがたくさんヒットしますので、探すのは容易です。
そんな表現の一つが「ご厚誼に厚く御礼申し上げます」です。
これは簡単に言えば「いつもお世話になっております」を言い換えたものです。
それではこの「厚誼」とはどういう意味でしょうか。
また、「厚情」との違いはどこにあるのでしょうか。
この記事では、「厚誼」と「厚情」の違いを分かりやすく説明していきます。
「厚誼」とは?
「厚誼」とは、「こうぎ」と読みますが、「誼」が「よしみ」とか「親しい付き合い」であることから、「厚いお付き合い」のことを示す言葉です。
通常は、「ご厚誼に感謝いたします」のように、「ご」をつけた表現で感謝を述べるような、改まった挨拶文の中でしか使用されることはありません。
「誼」に関しては文字としてもほとんど触れる事がないものなので、この言葉を使う事で帰って気持ちが伝わらなくなるということもあり得ます。
「厚情」とは?
「厚情」とは、「こうじょう」と読み、文字通り、「厚い情け」のことで、言い換えれば「たくさんの好意や心配」を示す言葉です。
「厚誼」と同じように、通常は改まった挨拶文の中で、「ご厚情痛み入ります」のように「ご」をつけて、感謝の気持ちを表現するときに使用されます。
「厚誼」よりは若干カジュアル寄りの表現ではありますが、挨拶文以外のところで見ることはありません。
「厚誼」と「厚情」の違い
「厚誼」と「厚情」の違いを、分かりやすく解説します。
この2つの言葉は、ともに年賀状や社名変更などの挨拶文の中でしか使わないという部分では同じで、さらに意味としても「お世話になっています」という気持ちが込められているのも同じです。
しかし、大きく違うのは何に対する感謝かという事です。
すなわち、「厚誼」が「おつきあいをしてもらっている事」に関するものであるのに対して、「厚情」は、「気にかけてもらっている事」に関するものという部分にあります。
「厚誼」の例文
「厚誼」の例文は以下のようになります。
・『ご厚誼に厚く御礼申し上げます』
・『今後とも変わらぬご厚誼を賜りますようよろしくお願いいたします』
「厚情」の例文
「厚情」の例文は以下のようになります。
・『昨年中は並々ならぬご厚情を頂きましてありがとうございました』
・『ご厚情に報いるよう、努めさせて頂きます』
まとめ
この記事では、「厚誼」と「厚情」の違いを、解説してきました。
序文でも述べたように、今となっては年賀状などの挨拶のテンプレートでしか見た事がないような表現です。
しかし、だからと言って必要ないものと切り捨ててしまって良いとは言えません。
日本には古くから脈々と受け継がれている「美しい日本語」というものがります。
なんでも効率化を優先して無駄だと言わないで、もう一度見直して見てはどうでしょうか。
いつもは使わない表現の中にこそ、美しさがあるのではないでしょうか。